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Yuko Torii,
Clinical Psychologist
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Breath Training  ・・・呼吸

私たちの神経は、脳と脊髄から成る中枢神経と、脳と各器官を結ぶ末梢神経の2つに大別されます。末梢神経には、骨格筋の運動を支配する運動神経、皮膚や感覚器からの知覚神経、内蔵や脈や腺の分泌を支配する自律神経があります。運動神経や知覚神経は、私たちの意志で働くのに対し、自律神経は私たちの意志とは関係なく自律的に働いています。

私たちの身体は、ストレスなどに曝されて緊張状態になると、自分の身を守るために必要な生理学的な反応を起こします。緊張状態では、身体は「戦うか逃げるか」という体制にスイッチし、筋肉に酸素や栄養がより速く届くように、血圧が上がり、脈拍数が増加し、呼吸が速くなります。体温が上がりすぎないように発汗し、外傷による血液の流出を最小限にとどめるとめに血液の凝固能力が高まります。食べ物の消化の働きは後回しにされるために唾液が減り、胃腸の活動は低下します。
これらは自律神経の働きによるものです。

本当に逃げたり戦ったりしなければならない時には、これらの反応は大変役に立ちます。これらの反応によって、私たちは自分の身を守ることができるのです。けれどもこれらの反応が過敏になり、必要以上に働くようになると、身体は常に緊張状態になり、免疫力が低下するなどの問題が起こります。

心臓の脈拍、血管の収縮などの内臓器官の働きは、自分の意志でコントロールすることができませんが、自律神経の中でたった1つだけ自分で調整できるものがあります。それが「呼吸」です。
私たちの呼吸は、普段は自律的に行われていますが、意識して行うこともできます。つまり生物学的に、呼吸器は運動神経と自律神経の両方に支配されているわけです。

私たちが不安や恐怖を感じて緊張すると、身体が反応して呼吸が変化します。
心の状態と呼吸の関係を非常に省略していうと、「呼吸は、常に心の状態を反映している」ということになります。このことを逆に利用すると、呼吸を調えることによって、心を調えることができるようになります。

東洋の様々な修行法は、最初に呼吸法の訓練から始めることが知られています。たとえば気功は、調身(身体をととのえること)、調息(呼吸をととのえること)、調心(心をととのえること)の3つが基本であると言われ、呼吸の調整を通じて、心と身体をととのえようとします。これは、仏教、道教、儒教の哲学にも通じています。

心の問題に取り組む場合も、常に自分の情動に圧倒されているような状態では、落ち着いて自分の心の課題と向き合うことができません。生きていれば不安や恐怖は起こりますが、そこから抜け出す方法を知らなければ、必要な行動を起こすことも難しくなります。呼吸をととのえる、という心を落ち着かせるシンプルな方法を身につけておくことは、心の問題を扱う上でも非常に有効なことなのです。

ところで、不安や恐怖を感じたとき、リラックスしようとして大きく息を吸い込むのは間違いです。必要なのは、ゆっくりと息を吐くことであって、必要以上に息を吸うことではありません。
自律神経には、交感神経と副交感神経がありますが、呼気は副交感神経に作用し、吸気は交感神経に作用します。交感神経は心拍を速め筋肉を緊張させ、副交感神経は、筋肉の緊張を緩め、身体をリラックスさせます。
動揺して呼吸が速くなっている時、落ち着くためには、ゆっくりと息を吐く方に意識を向け、吸う方は自然に任せます。ストレスに曝されると身体は「もっと酸素が必要だ」という反応をしますが、実際に戦ったり逃げたりしない限り、それは過剰なのです。過剰に空気を取り入れると、過呼吸の状態になって、めまい、息切れ、胸の圧迫感など身体症状が現れるため、余計に動揺します。まずは、ゆっくりと息を吐くことが必要なのです。

呼吸は日常的に訓練することによって、いざという時に落ち着いてコントロールできるようになります。様々なリラクゼーション法や瞑想、ヨガなどの呼吸の訓練を含むものを日常に取り入れるのもいいでしょう。



 

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